心配しないで!幼少期に見られる「空想の友達」がもたらす効果
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『となりのトトロ』のサツキちゃんとメイちゃんのように、子どもが架空の人物や生き物を頭の中で描き、その空想の友達が現実の世界に登場するかのような言動をすることがあります。この空想の友達は「イマジナリーフレンド」や「イマジナリーコンパニオン」と呼ばれ、欧米では一般的な現象としてよく知られています。今回は子ども達が空想の友達を作る理由やそれがもたらす効果などをご紹介します。
この記事の目次
空想の友達の話をする=嘘をついているわけではない
筆者が英会話教室で接してきた生徒にも空想の友達の話や、「さっきお空に龍が飛んでたよ!」「今朝怪獣がいて怖かった」と目には見えない人物や生き物がリアルな世界に登場しているかのように話す子ども達がたくさんいました。保護者の方々にはそのような言動を心配されている方も多く、「子どもが嘘ばかり話すので困っています。」という方もいらっしゃいました。
でもそれが幼児期の言動であれば、多くの子ども達が通る道でどの子どもにも起こる可能性のある現象です。上越教育大学大学院講師の森口佑介氏の「子どもだけが感じている?幼児における空想の存在についての認識」という研究では、「米国では、20-40%の幼児がイマジナリーコンパニオンを持つ」(※1)という調査もあると紹介されています。また子ども達には本当に空想と現実がはっきりとしていない場合があるので、真実を伝えようとしているだけで、決して嘘をつこうとしているわけでもありません。
何歳頃に現れるの?どんな風に現れるの?
2歳半や3歳頃に空想の友達が現れる子どもが多く、数年続き、5~6歳頃に自然に消えていくことが多い現象です。小学校入学頃は徐々にイマジナリーフレンドが「空想」であることに気付きだす時期と言われています。
空想の友達はいつも同じ特定の場所で現れるパターンや、名前を付けてその友達の名前を呼びながら常に一緒に行動するパターン、1人だけでなく複数の友達を登場させるパターンもあります。
なぜ空想の友達を作るの?
アメリカでは子育てのバイブルとも呼ばれる、Workman出版の”What to Expect the Toddler Years”(※2)という本があります。(これは幼児の育児書で、別に0歳児向けの物などシリーズ本がたくさんあります。)この本でもイマジナリーフレンドについて細かく書かれていて、空想の友達を作る理由が以下の様に紹介されています。
・現実の友達より自分がコントロールできる友達、自分の思った通りになる友達が欲しいから
・悪いことが起こった時の(精神的な)身代わりにするため
・理性や自信がなくなった時に自分を取り戻すため
・怒りや不安、恐怖、不快感などをまだ上手に表現できない時に利用するため
・孤独感やさみしさを紛らわすため
どのような効果をもたらすの?
困難を乗り越えたり、自分をコントロールできる
上記で述べた空想の友達を作る理由に繋がりますが、イマジナリーフレンドを作ることで孤独感やさみしさ、恐怖心や怒りが収まったり、精神的な支えが生まれることで、困難を乗り越えられるという効果があります。
NHKテキストビュー(※3)では『アンネの日記』がほぼ毎回「親愛なるキティーへ」という一文から始まっていて、キティーとはアンネが生み出した架空の友人であることを、以下のように分析しています。
毎回必ず最後に「アンネより」、あるいは「アンネ・M・フランクより」と署名したことです。毎回名前を刻むことは、「私はここに生きているのだ」と確認する作業となったはずです。世界にたったひとりしかいない自分、個人としての独立した自分の存在を、アンネは日記に繰り返し刻みつけることになったのです。
「キティーはいつも辛抱(しんぼう)づよいので、このなかでなら、わたしの言い分を最後まで聞いてもらえる」と、アンネは記しています。反論も否定もせず、ただ黙って話に耳を傾けてくれる友人。そう考えるとキティーはアンネにとって、カウンセラーのような存在だったのかもしれません。
空想の友達「キティー」は、とてつもない困難に立ち向かっていたアンネを支え、助けていたのかもしれませんね。
子どもの発達に効果がある
“What to Expect the Toddler Years”(※2)によると、イマジナリーフレンドを持つ子ども達は現実の友達が多くなる、言語能力が高い、創造力や発想力が豊か、自立心や社会性、協調性が高い傾向にあるという研究が発表されています。もちろん空想の友達がいるからといって全てが当てはまったり、空想の友達がいないから社会性が足りなくなるというわけではありませんが、イマジナリーフレンドは子どもの発達に良い影響を与えると言われています。
空想の友達がいる子どもとの接し方は?
温かい目で見守る
特に何か対処をするわけではなく、普通に接しましょう。「そんな人いないよ!」「嘘ついたらダメ」「しっかりしなさい」などと叱りつけず、温かい目で見守りましょう。
親が積極的に空想の友達と関わらない
子どもから「お友達のために○○をしてほしい」などとお願いされるまでは、周りの大人が空想の友達と勝手に会話したり関わらないようにしましょう。親が積極的に空想の友達と関わろうとすると、子ども自身がいつまでも空想と現実の違いに気付けないことがあります。
親が空想の友達を利用してしつけない
同様に「お友達が○○してほしいって言ってるよ」と空想の友達を使って子どもをしつけようとするのもNGです。子どもは自分でイマジナリーフレンドをコントロールしたいと考えているので、非常に怒ったり非協力的になったり、反抗的になることがあります。
子どもが空想の友達を利用して、親の言うことを聞かない時は、「お手伝い」
部屋が散らかっている等、何か注意をした時に、「私じゃなくて○○(空想の友達)がやった」と言い逃れすることもあります。そんな時は「あなたは○○のお友達なんだから、お片付けをお手伝いしてあげて」と促す方法が効果的です。
感情を表に出すための空想の友達ならその友達について話してもらう
感情を表に出すのが苦手なお子さんが、空想の友達を使って自分の気持ちを表現することもあります。そのような場合はその友達について親が積極的に尋ねて話せる環境を作りましょう。
【出典】
※1 上越教育大学 『「子どもだけが感じている?幼児における空想の存在についての認識」の研究結果を発表しました。』
※2 “What to Expect the Toddler Years” Workman 1996
※3 NHKテキストビュー『「親愛なるキティーへ」ーアンネの日記帳が果たした重要な役目とは」
まとめ
他者と関わりたいと思っている子どもが自分の頭の中で会話ができるお友達を作り、自ら創りだす世界の中に入り込むことは決して悪いことではありません。自分自身が幼い頃にそのような経験をしたと記憶している方は多くないと思いますが、特定のぬいぐるみと会話していたという方や、大人になってもお花やペットと頭の中で会話をする方がいるように、イマジナリーフレンドは精神的な支えとなる存在です。もしお子さんが空想の友達を作っていたら、温かい目で見守ってくださいね。