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マンガ『将棋の渡辺くん』から見る、子育てにおける親の役割

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この記事の目次

『将棋の渡辺くん』とは

このマンガは、
棋士である渡辺明竜王(2017年7月14日現在)の奥さまである伊奈めぐみさんが、
一般人が窺い知ることのできない、プロ棋士の日常生活について描いているものです。

 

史上4人目の中学生プロ棋士として2000年にデビューをした渡辺さんの日常生活は、

普段の対局をしてる時のイメージとは相当かけ離れていました。

その印象的なエピソードについては、後の章でもご紹介しますが、

一言で言うと

「相当な変わり者」

だと思います。

だけど、マンガを読み進めていくうちに
渡辺さんが、どうして若いうちに才能を開花させ、
わずか15歳でプロ棋士になることができたのか、その理由が分かるような気がしました。

 

このことは、将棋に限らず、
親が子どもを育てていくうえで、大切なことなのではないかと感じます。

 

『将棋の渡辺くん』の内容に触れながら、
私がこのマンガで読み解いた、
「子育てにおける親の役割」について紹介していこうと思います。

渡辺明さんって、こんな人。

 

  小さい頃からずっと、自分は棋士になると思っていたから
  将棋や生活の役に立たないと思うことに関心がなかった
            伊奈めぐみ『将棋の渡辺くん』2巻・p6

 

小さい頃から将棋に打ち込んできた渡辺さん。

一般常識的なものについては、少し弱いようです。

 

 

干支が分からない

お正月に届いた、ヘビの絵が描かれている年賀状を見て、この一言。

 

  「なんかヘビの絵が多いね」
  「あぁそっか、今年辰年なの」
    伊奈めぐみ『将棋の渡辺くん』1巻・p12

 

→ヘビの別名は辰ではありません。

 

干支の「辰」「巳」「卯」は何であるか問われた時の返答

 

  「‘たつ’はねー難しかった。くじゃくのことでしょ?」 
         伊奈めぐみ『将棋の渡辺くん』1巻・p23

  
→辰は、ヘビでもクジャクでもありません。

 

  「‘み’はねー忘れちゃった・・・にわとり?」
       伊奈めぐみ『将棋の渡辺くん』1巻・p23

 

→にわとり???

 

  「あと‘う’もあったっけ?鵜飼いの‘う’」
    伊奈めぐみ『将棋の渡辺くん』1巻・p23

 

→渡辺さんに「‘酉’って何ですか?」って聞いてみたい。

血液型の種類を把握しきれていない

小学生の息子さんに「僕の血液型って何?」と聞かれた渡辺さんは
「AB型」と返答をしますが、息子さんの血液型はB型。
そこで奥さまであるめぐみさんは「違うよ」と突っ込みを入れるのですが
渡辺さんは、驚きの返答をします。

 

  「あれ?血液型にAB型なんてないか」
     伊奈めぐみ『将棋の渡辺くん』1巻・p80

→いいえ、あります。

 

その後、父子の会話はこう続いています。

 

  「お父さん、血液型知らないの?」
  「そういうの、もう忘れちゃった」
      伊奈めぐみ『将棋の渡辺くん』1巻・p80

 

→ABO式の他に、RH型ってのもありますよ~。

昔話のストーリーが怪しい。

 

 渡辺明さんの「桃太郎」

 

  むかしむかし、おばあさんが川で大きな桃を拾い
  おじいさんが桃を割りました。
  中から男の子が出てきました。

  桃太郎が10歳になった時、鬼退治に行きました。
  おばあさんがお弁当に団子を持たせてくれました。

  サルとキジと何か・・・
  何かと一緒に鬼をやっつけました

        伊奈めぐみ『将棋の渡辺くん』2巻・p61

 

→「何か」って・・・すごく気になります。

 

渡辺明さんの「赤ずきんちゃん」

  ある所に、赤ずきんさんがいました。(原文ママ)

  知らないおばあさんにリンゴをもらって、食べると倒れました。
  小人たちが悲しんでると王子様が・・・
              伊奈めぐみ『将棋の渡辺くん』2巻・p61
 

→「ハイホー♪ハイホー♪」という歌が聴こえてきそうです。

 

渡辺明さんの「サルカニ合戦」

 

  サルとカニが砂浜で戦いました。
  終わり。

    伊奈めぐみ『将棋の渡辺くん』2巻・p61

 

→巌流島?

 

渡辺明さんの「ブレーメンの音楽隊」

 

  何それ?お菓子?

    伊奈めぐみ『将棋の渡辺くん』2巻・p61

 

→確かに、ヨーロッパのお菓子風な名前ですが・・・。

 

他にもマンガの中には、驚くようなエピソードが満載なのですが、
そんな渡辺さんに対し、めぐみさんはこのように言っています。

 

  君は一般知識を泉に落として、
  女神に、正直者には棋力をあげますって言われて
  一般知識を返してもらえなかった感じだね
        伊奈めぐみ『将棋の渡辺くん』2巻・p61

 

と、プライベートでは、このような感じの渡辺さん。
小さい頃は、どんなお子さんだったのでしょう。

 

子どもの頃のエピソード

 幼いころから「棋士になる」と思っていた渡辺さん。

 
   旦那は5歳のときに将棋を覚え、15歳でプロになった
            伊奈めぐみ『将棋の渡辺くん』1巻・p1

 

と、あるように、子どもの頃から棋士になるために努力を続けていました。

 

将棋を始めてしばらくして、アマ4級となった渡辺少年は、
毎週日曜日は将棋会館の道場に通ったり、
近所の将棋道場に行くなどして着々と力を身につけ、
小学2年生にしてアマ初段、小学生名人戦でベスト4に入り、
小学3年生の時に優勝(テレビ放送時は4年生)
4年生で試験を経て、史上初の小学生での奨励会への入会を果たします。
        

奨励会とは、日本将棋連盟が運営するプロ棋士養成機関のことで、
合格するには、かなりの実力が必要になります。

 

  それぞれの町で1番か2番の強さを持った子たちの中で、
  棋士を目指す子が奨励会試験を受ける。
  毎年受験者約50人、合格者約20人。
  そうして集まった奨励会役150人。
  その中で勝ち上がった人だけが棋士になる。
  毎年4人。
         伊奈めぐみ『将棋の渡辺くん』1巻・p148

 

奨励会に入会することもさることながら、

その先にある「棋士になる」ということも狭き門なのです。

 

渡辺さんは、自らの意志で中学受験をしています。

 

「あれ、もしかしたら、上手くいけば中学生のうちに棋士になれそう・・・?」

と、思った、小学校6年生当時の渡辺少年は、
このまま公立の中学校に進学すると
奨励会が大変な時(プロ棋士になる予定の年)と、

高校受験が年齢的にかぶることに気付きます。

 

そこで、高校受験が不要な中高一貫の私立の受験を決めた渡辺少年は、
連日のように塾通いをして学力をつけながら、
将棋を理解してくれそうな学校を探し出し、
見事、志望校に合格を果たすのです。

 

このように、大切な時期に

将棋に集中できる環境を自ら作った渡辺少年は、

見事、中学3年生にしてプロ棋士になることができました。

 

子どものうちに自分の将来の目標を定め、
それに向かって自分で考えて行動し、努力ができること。
なかなか、こういうケースは珍しいと思います。

 

渡辺さんを、そのような子どもに育てたご両親は、
一体、どのような方々なのでしょう。

 

渡辺さんのご両親

めぐみさんは旦那さんのご両親について、このように評しています。

 

  旦那の両親は穏やかな人
  嫁の私も、何か言われたことがない
    伊奈めぐみ『将棋の渡辺くん』1巻・p77

 

渡辺さん本人も

 

 「あんまり怒られた記憶ないなあ。 
  将棋もほめて伸ばすって感じだったし」
    伊奈めぐみ『将棋の渡辺くん』1巻・p77

 

と、言っています。

このことが、棋士・渡辺明を誕生させた全てではないかと私は考えます。

渡辺さんのご両親から見る「子育てにおける親の役割」

 

もし、渡辺さんのご両親が

 

「将棋ばかりやっていて、人間的にどこか偏ってしまったら心配」
「一般常識が欠如してしまったら大変だ」

 

と、渡辺さんを将棋から遠ざけてしまっていたり、

無理矢理、将棋以外のこともさせたり、

 

「プロの棋士になるなんて難しいことなんだから、
レベルの高い大学に行って、一流企業に入ってほしい」

 

などというような考えを持ってしまっていたら、
「プロ棋士・渡辺明」は誕生していなかったのではないかと感じます。

 

渡辺さんのご両親が大切にされていることは、

「息子の夢の実現のための環境を整えること」

であるように私の目には映ります。

 

渡辺さんに最初に将棋を教えたのも、
千駄ヶ谷の将棋会館に渡辺少年を連れて行ったのも、
奨励会を受験するために必要な「師匠」につくために
所司六段の教室に一緒に行ってくれたのも、渡辺さんのお父さんです。

 

さらに言えば、
中学生のうちにプロ棋士になるために
中学受験をした渡辺少年ですが、
これは、親の理解と協力なしにはできないことだと思います。

 

受験勉強のための塾の費用もさることながら、
公立の学校よりも高額な授業料の負担、

受験に関わる様々な準備など、
ご両親の理解と協力があってこそ、為し得たことです。

 

このマンガに描かれている様子を見る限り、
渡辺さんのご両親は、プロ棋士になれともなるなとも言っていません。

 

ただただ、
息子がやりたいことを見守り、応援し、
そのことに集中できる環境を整えることに専念しているように見受けられます。

 

これこそが、
子育てにおける親の役割の一番大きな部分なのではないか、
と、私は感じました。

おわりに

『将棋の渡辺くん』から見る、子育てにおける親の役割について述べてきました。

 

子どもを育てていると
「こんな大人になってほしい」
などと、親の理想を思い描いてしまう場面も出てくると思います。

 

だけど、子どもの人生は、子ども本人のもので、
親の人格とは全くの別物です。

 

「良かれ」と思って子どもに何かを勧めても
子どもの側からすれば
「ただの押し付け」にしかならないこともあるのではないでしょうか。

 

子どもがやりたいことを見守り、応援し、
そのことに集中できる環境を整えること

これこそが、親の最大の役割なのではないかと
私は、このマンガを通じて気づくことができました。

 

最後になりますが
『将棋の渡辺くん』には
他にもたくさんの面白いエピソードが載っています。

 

棋士の日常生活、対局の際の食事やおやつ事情
渡辺さんが、大のぬいぐるみ好きだというエピソードなど、
プロ棋士の意外な側面を知ることができるので、
少しでも興味を持ってくださった方は、ぜひ1度読んでみてください。

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ライター紹介 ライター一覧

山中みさと

山中みさと

1981年生まれ、宮城県仙台市出身、千葉県在住。
2007年6月生まれの娘・2018年8月生まれの黒猫(男の子)の子育て真っ最中。
大学卒業後は出産まで図書館に司書として勤務。
結婚後は、子どもの幼稚園・小学校でPTA役員を経験。
教員免許(中高・国語)、司書資格、司書教諭資格を持つほか、
学生時代、塾講師のアルバイトの経験もあり。
趣味は、読書、アニメ。


10年近く育児をしてきた中で、
いいことだけではなく、困ってしまったこと、悩んだこと、
壁にぶつかったことなど、たくさんの経験をしてきました。

そんな私の経験を記事にし、
少しでも皆さんのお役に立てれば幸いです。
よろしくお願いいたします。

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